先日、仕事で山へ入りました。
ご実家の山の木を使って家を建てたい、とのこと。
材木を売り払って資金を作って、ということではなく、
先祖代々守ってきた山なので、大事にありがたく木を使いたいのだ、
という、伺ったこちらも嬉しくなるようなお話でした。
その場所を確認し、今後の段取りなどを考えるために山へ。
曇り空でしたが、山々の紅葉も見事でした。
道路から山へ入っていく道すがらも、紅葉と落葉で秋の風情。
いやでも気持ちが盛り上がります。
白樺、赤松、栗、櫟、楢。
紅で染めたような楓。
こんな風景の中を、お客様と製材所の方と私と、皆で分け入って行きます。
住宅の構造材に使いやすく、岩手の山に多い樹種は、
アカマツ、クリあたりです。
このクリもまっすぐで立派な太さ、直径30cm以上はありました。
なかにはこんなのも・・・
アカマツ、直径は60cmオーバー、高さは推定15m以上!
根元に立つ製材所の方がおもちゃに見えます(笑)
単純に刻んで建築材にしてしまうのはもったいない・・・
エンジュの木は、框や床柱、建具などの細工物や小物にも使えます。
木目も木肌も美しい木です。
建築時期はまだ先のお客様ですが、土地探しからご相談くださって、
いまこのようなプロセスを共に進ませて頂いています。
設計者の仕事は間取りを描くことだと思われがちですが、
それだけではないと私は思っています。
できるなら、家を作ろうと考える最初の段階から相談してほしい。
土地を買うときに大事なことは、なにも坪単価だけではないです。
安ければいいというものではなく、人生における利便性も大事ですし、
愛着や想い出があるのかどうかも、生きていくのに重要な要素です。
建物をつくるにも、そこに住む人たち、家族の有りようを
きちんと反映させた家でなければ、便利で快適に過ごせるはずはありません。
もちろん性能や素材も大事ですが、人より優先すべきことなどないのです。
それらを、なにも決まっていない時から常に頭に入れておき、
購入を迷う土地や建物にその都度条件をあてはめて可能性を探り、
どの選択が自分に一番相応しいかを決める、というおそろしく大変な事業を、
素人であるお客様だけで充分に進められると思うほうが無理がある、
と思いませんか?
それらを共に考えることも、設計者の重要な仕事なんです。
どの分野でも、専門家の存在価値は突き詰めて言えば、
専門外の人の力になることに尽きるのですから。
そういうことを面倒だと言う専門家がいることも、残念ながら否定は出来ません。
ですが、喜んで付き合い、最後にできあがったあなたの家を見て
泣きそうになるのが楽しみでこの仕事をしている物好きもいることを、
できるだけ多くの方に、心の隅に留めておいて頂けたらいいな、
と山を歩いていて感じました。
まして、故郷の山の木を使って家を建てたいなんてお話、大歓迎ですよ!!
だって、こんなにのどかな場所を、仕事で歩けるんですから。
楽しくないわけがないでしょう!