時代

市原悦子さんの訃報に、自分でも驚くほど
大きな衝撃を受けている。

昨夏には、常田富士雄さんが亡くなった。
おふたりで、まんが日本昔ばなしの語りを担った。

男声の常田さんも女声の市原さんも、
それぞれがたったひとりで
老若も性格も問わず様々なキャラクターを演じ分け、
完璧に物語の世界を成立させていた。

20年もの長い期間、土曜の夜7時という
もっとも家庭に近い時間帯で放送されて、
その後も何度も再放送や特別編成で復活していた。

10年ちょっと前に「ごんぎつね」が放送された。
ラストの常田さんの声の切なさは、
いまも忘れられずにいる。

僕にとっての存在の重さで言えば、
子供の頃に見たどのテレビ番組よりも大きいのである。

おふたりとも、次の年号を見ずに亡くなった。
トーク番組や他のドラマでお声を聞いて、
まんが日本昔ばなしのワンシーンのようだと
嬉しくなることは、もう二度とない。

糸を引くようにほそくほそく続いてきたなにか、
子供時代につながるなにかが、
ぷっつりと切れて終わったように感じられた。

どうか安らかにお眠りください。