憧れのタイル貼り【家のつくりかたコラム】vol.20

Q.タイルはマメに掃除しなきゃいけなくて大変なのでは?

A.そもそも手入れが要らない材料は無いんです。

「建築タイルにふれる展」を開催してみたところ、
想像したよりも皆さん、じっくり見て、触ったりして、
いろいろと尋ねてくださったりもして、
関心は高かったんだな、と実感します。

タイルに対する印象も人によってさまざま。
レトロでクラシカルでかわいい感じ、とか、
憧れるけどとにかく高価な高級品、とか、
公衆便所のように殺風景で野暮ったい、とか、
印象の方向性も全方位、という感じです。

それだけ、タイルというものがいろいろな目的、
雰囲気で使われてきたことの証でしょうか。
実際、タイルはとても優秀な仕上げ材です。
耐久性・堅牢性が高く、見た目が良く、使い勝手も悪くない。
実務者としてそう思います。

タイルに対して、クラシック、レトロな印象を
感じる方はだんだん増えてきているようです。
タイルを普通に使っている環境がかなり減ったので、
古い建物でしか見たことがない、という方が
増えているのも影響がありそうです。

実際、公共建築物でも商業建築物でも、
トイレや手洗いなどの水廻りでも
床は塩ビのシート系材料、壁はポリエステルや
メラミンのパネル材料で済ませることが
増えているように感じます。

そうした材料と比べるとタイルの方が
価格も上がりがちですから仕方ないのかも知れません。
また、清掃の手間を考えるとタイルの目地は
汚れが残りがちなので煩わしく感じて
敬遠されるのも、理解は出来ます。

ですが、タイルそのものは他の材料より
むしろ汚れ落ちが良いことが多いので(施釉の場合)
簡単にでもいいからすぐに拭き取れば、
何年経っても綺麗なままだったりもします。

ずいぶん前に改修した、当時築40年以上のお宅の台所は、
キッチンのコンロ周りの壁にタイルを貼っていました。
本当に綺麗だったので一度貼り替えたのかと思ったら
新築時に貼ったままだとおっしゃるので驚きました。
油のはねる料理を作っても、その日のうちに
お湯でぬらして絞った布巾や雑巾などで拭くので、
汚れの固着も変色もさほどなかったのです。
その家には、油汚れ用洗剤がありませんでした。
毎日ざっと拭くだけで綺麗に保たれるので、
洗剤を買ってくる必要がなかったそうです。

そもそも、まったく手入れが要らない材料は、
地球上にはありません。
メンテナンスフリーを謳う材料も、
よく見れば“日頃の簡単な手入れだけで”OKと
小さな文字で書いてあったり、
使用条件が限定的とかだったりすることが多い。
多少の手入れは絶対に必要です。

そう考えると、大規模建築物の広い面積に貼るのは
いろいろ難しくても、家庭の水廻りで
小さな面積に貼るぶんには向いている材料と言えます。

手入れも何も必要なくただ存在する物って、
だんだん愛情もなくなっていきませんか?
美術品でも家具でも、掃除したり磨いたり
いろいろ手を入れてこそ愛着が湧くものです。
放っておいたらただの“荷物”になるでしょう。

タイルのようにこだわりが反映されやすい素材を
少量でも良いから採用して、少しの手入れを心がけて、
家に愛着を持つように仕向けていくのも
良い家づくりの重要なファクターだと思うのですが、
いかがでしょうか。