Q.よく考えないで建てた家に不満だらけ、
でもいまさら改修してももう遅いし…
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A.何かを始めるのに“もう遅い”ということはありません。
今より早い瞬間はない、と言うじゃありませんか。
先日、事務所で雑談をしていった方がいて、
お話を聞きながら、昔聞いた似たような話を思い出しました。
30年ほど前に、ハウスメーカーで住宅を建てた。
ちょっと問い合わせをしたらどんどん話が進んで、
聞かれたことにだけ答えて、いきなり図面が出されて、
カタログやパンフレットに載ったものしか選択肢はなく、
打ち合わせのたびに決めなくちゃならないことがあり、
毎回その日のうちに答えを出させられ、
追い立てられるようにして打ち合わせをして疲れ果て、
気づいたら家が建っていた…
この30年、あちこちに不満があって後悔し続けている。
でももう60代後半、いまさら直しても無駄だ…
こういう話を聞いたのは、一度や二度ではありません。
家をつくるときには、まず自分と家族を見つめ直して
何が必要かをよく考えること、ということを、
このブログでも何度も書いていますし
直接ご相談を受けても必ずお話ししています。
建ててしまったものは仕方ないですし、
上記のような作りかたを押し進める業者には
何を言っても無駄なのでなにも言いませんが、
施主に対しては、「無駄なことなどありません!」と
声を大にして言いたいです。
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「たとえ明日世界が滅ぶとも、今日私は林檎の木を植えるだろう」
16世紀の神学者、マルティン・ルターの言葉です。
人生の終わりがいつ、どんな形で訪れるのかは、
誰にもわかりません。
年齢を重ねるほど体調の変化を実感して、
未来に対して不安が増えるのはとてもよくわかります。
明日死ぬかもしれないのに改修なんか、と
おっしゃった方もいます。
でも、明日死ぬかもしれないのは
20代でも60代でも同じです。
若いうちは事故に遭わない、急病に罹らないと、
断言する根拠は何もありません。
そういう突発的な出来事がなければ、
人生が終わるまでに数年、10年、20年という時間が、
60代の方には残されているはずです。
それはまだまだ充分に長い時間だと私は思います。
毎日生活の不満を感じ続けてその期間を暮らすのと、
不満が解消されて快適に使える毎日を過ごすのでは
人生の終わり方も全く違うのではないでしょうか。
もちろん大がかりな改修は費用も大がかりになるので、
おいそれと決断できるものではないでしょう。
でも、いま不満を感じている部分、不具合のある部分を
不満の大きい順や緊急度順に改善していくことなら、
あまり大げさにしない範囲でできるかもしれません。
部分的な改修や補強、補修、あるいは家具の造作などで
問題が解決できる場合もあります。
人によって事情と状況が違うので一概には言えませんが、
握力の弱った一人暮らしのおばあさんの家に、
手をつきやすい高さに台のような手すりを設けたり、
立ち上がりやすい高さのベッドをしつらえたりと
体の状況に合わせた改装を施した結果、
介護の必要性が下がったこともありました。
毎日の生活が快適になることで、自分でできることも増え、
それがまた適度な負荷になってリハビリのような
効果をもたらすこともあるそうです。
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以前のバリアフリーの記事でも書きましたが、
障壁(バリア)の状況や程度は人によって違います。
そして、バリアは障害や老化によってだけ生まれるとは限らない。
例えば、毎日料理や洗い物をする人の背丈に対して
キッチンが高すぎる、または低すぎる問題もよく聞きますが、
作る前によく考えていれば対処できたことで、
れっきとした“障壁(バリア)”です。
その作業を担当する人に我慢を強いている。
人によって千差万別の状況をよく確認して、
そこに合わせてつくるのが家づくりの基本です。
基本が出来ていない家に暮らしていても、
基本に立ち返って直すことはできます。
家のなかの自分が大事にしている場所を
使いやすいように、居心地の良いように、
できればちょっと美しく作り直すことで
改修前に迷っていたことがもったいなく思えるほど
毎日の生活の満足度が上がります。
これは何度も、小改修をしたお客様から伺ったことで、
どの方も大変実感がこもっていました。
設計事務所は突飛な建物を新築で作るのが仕事、
とお思いの方も多くて、先日お客様に
それを言ったら「そう思ってた~」と笑っておられましたが、
私は小さな改修も改装も手がけています。
迷っているなら、一人で抱え込まずにまず、
とにかく相談してみてください。
やっぱりやめた、となればそこで話は終わり、
無理にお引き留めはしません。
でも実行することになったら、完成したその後に
たぶん迷っていた時間を後悔することになりますから。