工事はどこに頼めばいいのか【家のつくりかたコラム】vol.11

Q.工事をお願いできる工務店を知りません。
紹介してもらえますか?
(または)工事は知り合いの工務店にお願いしていいですか?

地鎮祭の準備をしてくれる工務店さん

A.どちらも可能ですが、無条件に、とは言いづらいです。

今回も頂いたご質問にお答えします。

真逆のお尋ねですが、どちらもよく聞かれます。
結論から言うと、もちろん工務店をご紹介しますし
どこかをご存じならそちらに依頼して頂いて構いません。
どちらでも対応できます。

今回は簡単に書くことを主眼にしますので、
いろいろと端折っていることを前提に読んでください。

設計事務所は、施主との間で設計業務委託契約を結んで、
設計業務を行います。設計とはおもに、
・敷地のある地域の法令調査
・施主と打ち合わせて家を設計し図面を作ること
・図面を基に見積を作ること
・役所などへの申請
・工事が図面通りに進むよう現場を監理すること
などです。
業務に“工事そのもの”は含まれません。

そこで、工事は工事で、施主と工務店の間で別途、
工事請負契約を結んでもらいます。
設計事務所とは別の会社と、別の契約をすることになります。
ですから、工事の契約をどこと結ぼうが施主の自由であり、
それは当然、お知り合いの工務店に依頼することも可能だ、
ということです。

ただ、まったく繋がりがないのに自力で探してくるのは、
けっこうハードルが高いと思います。
どこでもいいなら電話帳を開けば
工務店の電話番号はいくらでも載っていますが、
高いお金を払ってつくる家ですから、
“良い工務店”に依頼したいのが当然の気持ちでしょう。
でも工務店の良し悪しを自力で見抜くのは、
(たいてい建設業界の人ではない)施主にとって
とてもハードルが高い、というのが正確な言い方ですね。

そういう時のためにも、設計事務所はかならず
工事を依頼できる工務店数社と繋がりをもっています。
これがご紹介できる、ということなのですが、
現実的には「ご紹介できます」というよりも
「どうしてもここに頼みたい、と決まっているのでなければ、
こちらからご紹介する工務店で進めてください」
という意味合いの方が強くなります。

なぜなら、普段と違う工務店が相手では監理も手間が掛かり、
上手くいかないことが多いからです。

工務店ごとに職人さんの仕事の段取り、
精度や速度、得手不得手、作業や材料ごとの価格、
コミュニケーションの癖などがまるで違いますし、
残念ですが、現実には仕事のレベル差もあります。

ですから私たちは、仕事をできるだけ詳細に見たうえで
信頼できる工務店とお付き合いをしています。
もちろん、一方的に信頼性を測る事はできません。
工務店もまた、設計事務所を信頼できるかどうか
シビアに見ているはずです。

コミュニケーションの癖、と先述しましたが、
職人さんは世間一般に、無口で頑固とか
そういうイメージがありそうです。
実際、口数が少なかったり、おしゃべりだけど
現場用語が多かったり、訛りが強かったりして、
うっかりすると互いに意図が行き違っていたり、
齟齬が生じるものです。

こういう部分は相性と言ってもいいのですが、
曖昧なまま、きちんと摺り合わせをしないと
大きな失敗にも繋がります。

信頼や相性の度合いを掴むのにも時間が掛かるため、
毎度違う工務店と現場を進めるということは
見落とすことも増えるのが当然で、
それは品質の低下に直結します。

そういう事情も含めて考えると、
できるならお薦めする工務店で工事して欲しいですし、
工務店にご指定があるなら早い段階で教えて頂いて、
できるだけ時間をかけてコミュニケートしたいですね。