新築か改修か、の前に【家のつくりかたコラム】vol.10

Q.土地があるのですが、古い家が建っています。
新築とリフォームで悩んでいます。

A.新築か改築かではなく、どう暮らすか、です。

今回も頂いたご質問にお答えします。

祖父母や親、本家などの親戚関係の方が住んでいた
古い家の建っている土地をどうするか、というのも、
悩みの深い相談事です。
最近では相続で取得することも増えてきています。

その土地建物がけっこう郊外にある場合、
たいてい土地が広すぎ、古い家も大きすぎて、
どう対応するか、悩まれるようです。
逆に中心市街地のケースでは、
駐車場がないとか、道が狭いとか、
隣の家と近すぎて採光通風の環境が悪いなど、
悩みもさまざまです。

これをどうしたらいいか、悩む人には気の毒ですが、
唯一絶対の正解も、うまく解決するコツもありません。
簡単に答えは出せないのです。
何度も言っていることですが、お手伝いしますので
一緒によく考えましょう。

はじめに考えるべきなのは、そこへ移るかどうか、です。
土地があって古い家が建っている、との言い方から察するに、
現在は別のところにお住まいでしょう。
そこが賃貸か所有かによっても判断は変わると思いますが、
基本的には、よりよい生活が出来そうなら移ることを考え、
難しそうなら手放す方向で考えるのがいいと思います。

この「よりよい生活」がどういう生活なのかを
じっくりきちんと考えましょう、というのが、
このブログで繰り返し書いているところです。
第8回で書いたように、どんな場所でどう暮らすのが
家族みんなの望みなのか、はっきりさせましょう。

「手に入れた土地に移る」ことが望みであると
はっきりわかってから初めて、今度は建物をどうするか考えます。
家族の生活や望みを飛ばして建物のことだけを考えても、
間違った選択肢しか出てきません。

古い建物をどうするか考えるときは、
プロと一緒に建物を見てください。

近年はリノベーションという言葉が広がったことで、
古い家の改修がかなり身近になっています。
行政も“ストックの活用“などの言葉で空き家を活かそうと
動いているので、これもまた身近に感じる一因です。

ですが、改修しても、長く快適に住み続けるのが難しい、
あるいは不可能な家もあります。
建てた当時の予算や技術や材料によっては
建て替えるのと同じぐらい改修費がかかるケースがあり、
残念ですが、それは決して少なくないのです。

耐震性能の不足、断熱性能の劣悪さ、
気密・換気の不足、白アリ等の害虫害獣被害、
配管設備や電気設備の不合理や劣化、
目に見える仕上げ材の劣化、などなど…
住宅の欠陥は、命に関わる問題になり得ます。
専門家としてそういう家はお薦めしづらい。

私たちが現場で建物を見るとき、
年代や目に見える部分のつくりかたから
材料費や手間をどこまでかけた家なのか、
ある程度までは類推できます。
ですが、時間経過による詳細なダメージについては、
壁や天井や床を剥がしてみないとわかりません。

また、建築に関する法律の内容は
時代に合わせてだいぶ変わっており、
様々な基準が年々厳しくなって来ました。
そのため、古い家を解体して新たに建て替える場合には、
古い家より小さくせざるを得なかったり、
費用を掛けざるを得ない場合もあります。

それでも、たとえそのような不利があっても、
健康で快適に暮らせないのなら、
建て替えるべき状態の場合もあります。
改修のほうが安く済むケースはもちろん多いですが、
金額だけで決めてはいけません。

この判断が、経験と知識が無ければとても難しい。
ですから、新築かリフォームか、は、
ご家族だけで考えるのではなく
専門家と一緒になって考えたほうが
失敗も少ないのではないでしょうか。