そもそも設計事務所とは【ウェブ茶話会(仮) 3 】

Q.そもそも設計事務所、設計士とは何をする人か。

A.どんな仕事なのか、ご説明します。

私が東京から岩手に帰ってきたとき、
すでに独立していたので「設計事務所やってます」と
名乗ったのですが、「どこの?」としばしば聞かれました。

どこの?の意味がわからないので問い返すと、
どこの会社の下請けなの?という意味だったようです。
「客から直接、設計の依頼を受ける仕事とは思わなかった、
そんな奴いるの」と言われたこともありました。
これが岩手(つまり地方)での認識か、と、ショックや怒りでなく
ただただビックリしました。

実際、大手企業の下請けとして図面を描く設計事務所もありますし、
工務店やハウスメーカーにも設計部があり設計士がいます。
そういうところに勤めていた人から聞いた“設計部“は
私の勤めていた設計事務所とはありようがまるで違い、
これもビックリしたのを覚えています。

ここでは、施主から直接依頼を受けて設計業務を行う
設計事務所の仕事内容を説明したいと思います。

まず法律のことで言えば、“設計”とは
【その者の責任において、設計図書を作成すること】、
(建築士法第二条第6項)
法律の条文の中に、設計の仕事として明記されているのはこれだけです。

実務のことで言えば、
①申請などの法務関係
(申請前に調べることも含む。家を建てる場所によって
適用される法規制が違うので毎回調べる。)
②間取りや仕様(素材とか機能とか見た目とか)を考えて
施主や工務店と打ち合わせ、それを図面にして現場に出す。
このウェブ茶話会の第1回と第2回で書いたように
施主自身の内面に施主と一緒に向き合い、
施主の基準や要望を明らかにして、間取りや仕様、性能を
法律、構造、コストなどの条件をクリアするよう調整しながら
施主の代わりにゼロから計画するのが設計士であり、
設計事務所のいちばん大きな仕事だと思います。

設計事務所はやっぱりデザインが売りなんですか、
などという話になることも多いですが、
この“デザイン”という言葉にも触れておきます。

“デザイン”という言葉は日本において、
“見た目”という意味で使われています。
体感で言うともう100%ですが、
これは意味の捉え方を間違っています。

これに関しては軽く記事の一本二本になりますので
詳しくは別の機会にしますが、英語の“design”は和訳すると、
意匠の他に立案、企画、企て、予定、意図、目的
などの意味があります。かなり幅が広い。
企画、意図、目的を考えることをデザインする、と呼びます。

設計者が間取りを描いているとき、考えているのは
見た目ではなく使い勝手です。
窓の位置や大きさ、戸や家具の位置、形状、造り、
棚があればその位置、奥行き、幅、取り付け方法。
それぞれの素材や仕上げ方も、見た目だけでなく使い勝手、
手に触れて不愉快でないか、すぐ壊れず長持ちするか、
そういうことも考えます。

そもそも床、壁、天井の仕上げも、見た目だけでなく
施主の好み(ときには体質など)も考慮して、
破綻のないように組合せを考えて提案をします。
外観の形も色も、見た目だけが重要なのではありません。

建築に関わる人間が必ず知っている“強・用・美”という言葉があります。
2000年以上前の建築家が言った、建築デザインの基本です。
“強”は強度、耐久性。
“用”は用いること、使い勝手。
“美”は見た目が美しいこと。
耐久性だけを追求するとゴツくなったり、
使い勝手だけに走ると華奢になりすぎたりするので、
見た目の美しさにも注意しなくてはなりません。

これらを兼ね備えなければ、デザインしたとは言えない。
本来「デザインが良い」という言い方はしません。
デザインされているか、されていないか、だけ。
強・用・美のどれかが欠けていれば、それは
『デザインされていない』のです。
「デザインと機能は両立しない」というのは
デザインを理解していない言い方です。

設計者の役割はデザインすることです。
そして、強・用・美は設計者一人で決めるのではありません。
“強”については客観的な基準もありますが、
“用・美”はひとそれぞれに基準があります。
ウェブ茶話会の第2回でも、本稿の中程でも書いたように、
施主とともに基準をあきらかにして、
施主とともにデザインをするということです。

設計の仕事とはそういうものだと、
私は20年前に教わりました。
仕事を通じて、その教えは正しいと
いつも感じています。

 

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